2007年6月13日 (水)

『破天荒力』-箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち-を出版

初夏の箱根には緑が萌え、風がさわやかに吹き渡ります。箱根は、神奈川県が誇る世界的なリゾート温泉地です。「もういちど行ってみたい温泉は?」というアンケート調査でも、第1位は箱根だといいます。私も子どもの頃から父に連れられて家族で年に1、2度は訪れていましたし、今は、私が家族とともに毎年泊りがけで出かけています。もちろん、県知事として、ウイークリー知事現場訪問や移動知事室などで、何度も箱根の各地に足を運んできました。

そうした機会にさまざまな方のお話をうかがったり、史料を勉強していくと、箱根開発には、まさに「奇妙人(きみょうじん)」とも呼ぶべき破天荒な民間人の活躍があったことが分かってきました。「奇妙人」とは司馬遼太郎さんの造語だと思いますが、私は、「自分の利益のためでなく、誰かに強制されたわけでもなく、とにかくコツコツと努力するのが好きな人」そして、「工夫して得た成果を、無償あるいは無償に近いかたちで公開し、誰かがそれを利用する姿を眺めるのを無上の楽しみとする人」と理解しています。最近は、利己主義の時代となり、自己利益や既得権を守ることばかりに集中する傾向がありますが、“私”を薄くして、“公”のために尽くす志=「サムライ・スピリット」を持った人が「奇妙人」ということもできます。

江戸末期から明治・大正にかけて、箱根開発を進めた奇妙人は、富士屋ホテル創業者の山口仙之助、福住旅館の福住正兄、そしてこの二人に大きな影響を与えた二宮尊徳と福沢諭吉、さらにそれを受け継ぎ国際リゾートとしての地位を確立した山口正造の5人です。私は、神奈川の力とは、先進力と協働力であると言っています。神奈川力を形づくる中心のひとつが「人材の力」です。箱根の特性を熟知し、その魅力を最大限に引き出してきたこれらの奇妙人の生き様に触れるたびに、深い感動と刺激を得ました。

これらの首都圏で最も近いリゾート温泉地、神奈川県が誇る国際観光地「箱根」を訪れる多くの皆さんに、その自然と温泉だけでなく、奇妙人たちのチャレンジの歴史も知ってほしいという思いで、『破天荒力』-箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち-を刊行しました。

「箱根の奇跡」を生み出した五人の偉人たちの高い志を、この神奈川のそれぞれの地域で、現在もそして将来も受け継いでいきたいと思います。神奈川における破天荒な挑戦から、本物の「地方の時代」が創り出されるものと私は信じています。
大手書店やオンライン書店などで発売中ですので、ぜひ、ご一読いただければ幸いです。

※詳しくは私のホームページにアクセスしてみてください。
 http://www.matsuzawa.com/write/literary.html#12
※『破天荒力』-箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち-(講談社刊、本体1,600円)

6月 13, 2007 地域, 歴史・文化, 県土づくり | | コメント (64)

2006年2月 1日 (水)

かながわフライト視察

1月23日、抜けるような快晴の朝。私を乗せたヘリコプター「さがみ」は、横浜市金沢区にあるヘリポートをふわりと飛び立ちました。一気に、三浦半島まで南下、そこから、相模湾沿岸を、湘南から西湘まで、かなり低空で飛行しながら、海岸侵食の現状をつぶさに現地調査してきました。湘南海岸は、海岸沿いの国道134号線に沿って防砂林がグリーンベルトを形成し、まさに白砂青松の海岸が伸びています。打ち寄せる波が白く輝き、遠くには雪煙までくっきり見える雄大な富士山が眺められました。

昨年5月、ウイークリー知事現場訪問で、平塚と茅ヶ崎の海岸を歩いて侵食の現状を見てきましたが、今回は、空から山、川、海へと連なる流れの中で、海岸侵食の全貌を調査しようというのがフライトの目的でした。上空から見ると、砂がやせて道路に迫っている様子や、前にも紹介した海に突き出たT字型の「ヘッドランド」に砂が付いている様子が、「鳥の目」で全貌を捉えることができました。

海岸浸食は、海だけのメカニズムで発生しているのではないと言われています。ダムなどによって山からの砂の供給が減ったことも影響していると指摘されています。そこで、今回のフライトでは、小田原方面まで行ったあと針路を北に変えて、水源地の相模湖や津久井湖まで上り、そこから相模川沿いに南下してきました。

冬なので、湖にもアオコの発生はほとんどありませんでしたが、湖面の多くはかなり汚れているように見えました。周辺の山の斜面や農地には、まだ先日降った雪がかなり残っていました。こうした雪や雨が、山に染み込み、長い年月をかけて岩や土の層を通り、清らかな水となって湧き出すのだなと実感できました。
相模川は、水量は確かに多くはないのですが、広大な河川敷を含めて、神奈川県の中央を南北に貫く壮大な水と緑(今は冬枯れではありましたが)のベルトであることがよく分かりました。

約1時間半のフライトの後に、ヘリコプターは、相模川河口近くの大磯港に着陸し、ここでは三沢大磯町長や町民の皆さんとともに海岸を歩き、砂の状況などを確認しました。その後、二宮町に移動し、古沢町長も加わり、両町の町民の皆さん約30人と意見交換会を開催しました。「公園の少ない二宮は海岸は公園のようなもの。もう一度、砂浜を取り戻すために、県は力を出してほしい」といった切実な訴えがありました。最後に、また大磯に戻り、「旧吉田邸」を拝見したのですが、このことは別の機会に書きたいと思います。

今回のフライトによる状況確認は、海岸侵食の問題の全体構造を考える上で、大変に参考になるものでした。今後、県では、相模湾のなぎさづくりに向けて、沿岸13市町の首長などを構成員とする、「なぎさづくり促進協議会(仮称)」を、この3月下旬に発足させます。この会では、海岸保全に関する啓発活動として、シンポジウムを開催するほか、有効な対策の研究などについて、国などにも働き掛けを行い、協力して取組みを強化していくつもりです。

また、今回は図らずも、神奈川という地域の美しい自然の魅力に触れることができました。三浦半島の上空から、青く澄み切った空のもと、はるか箱根連山から丹沢にまで広がる、色とりどりの風景に出会ったとき、何か宇宙飛行士が地球を見た時のような錯覚を覚えました。神奈川の海・山・川の織りなすランドスケープは、首都圏の宝物と言ってもいいと改めて感慨を深くしました。

2月 1, 2006 県土づくり | | コメント (84) |