2006年8月21日 (月)

「新・地方の時代」~自治体学会20周年に寄せて~

「自治体学」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「行政学」ではなく、自治体の学問ということです。自治体学は、地方分権改革の出発点ともいうべき「地方の時代」を提唱した長洲一二神奈川県知事が、地方の時代の理論的なバックボーンを創ろうと提唱した新たな学問領域です。
この自治体学を生み出していこうとの長洲知事の提案を受けて、全国の自治体職員や市民、ジャーナリスト、研究者が結集して生み出されたのが「自治体学会」です。このユニークな学会は1986年5月23日に神奈川の地・横浜開港記念会館で誕生したのです。私は、県議会議員の時代から、この自治体学会の地域フォーラムに参加して発表をしたり、学会員として自治に関する研究交流の機会を得てきました。

今年は、自治体学会が誕生して、ちょうど20周年です。20回目を迎える記念大会を8月25日に神奈川で開催する運びとなりました。前日にはこの自治体学会設立のきっかけにもなった「全国自治体政策研究交流会議」が開かれ、学会と会議が一体として展開されます。
今年の統一テーマは「『新・地方の時代』へ~神奈川からの発信」です。私もテーマ設定の際には、このテーマがいいと申し上げました。ちなみに、サブテーマは、「交流会議」では「『自治のかたち』を問い直す~暮らしからみた『地方分権』」、「学会」では「『市民の政府』を創る」となっています。
 
長洲知事が1978年に提唱された「地方の時代」は、その後、一連の地方分権改革の実現をみて、現在も三位一体改革などで、時間はかかっていますが、着実に進展をみてきたと思います。

私も知事として、さまざまな場面で、地方分権型の「国のかたち」への転換を訴えています。いくつかの提案を挙げると、三位一体改革の推進に当たってしっかりとした土俵づくりをするための「三位一体改革推進法」の制定、地方が主導権をとって実現する「道州制」の推進、自治体の広域連携を進める「首都圏連合」の実現などです。同時に、大規模基礎自治体における分権化の推進など、住民に近い自治の仕組みづくりも提言しています。まさに、今回のテーマにあるように新たな「自治のかたち」「市民の政府」の提唱を続けています。
 
今回の会議と大会は、神奈川県、横浜市、川崎市や県内市町村との連携で開催していますので、私と川崎市長は24日の政策研究交流会議でパネリストとして参加しますし、25日の自治体学会には、横浜市長や大和市長がパネリストで参加されます。
今、この時期に「新・地方の時代」の旗印のもとに、全国の自治体関係者~市民、自治体職員、ジャーナリスト、議員、首長、研究者~が集合して、現場の課題や実践をベースに侃侃諤諤と政策議論を展開することは、時宜を得たものと思います。私も、全国各地で地方分権の推進や市民自治の確立に努力を重ねている皆さんと、交流し議論することを楽しみにしています。

かつて1986年の設立記念のレセプション「情報交換会」は、横浜港に浮かぶ氷川丸の船上で「学会の船出」を祝ったと聞きます。20年目の今年は、未来都市のような「みなとみらい」のスカイスクレーパーを臨む横浜港の水際「Bank ART」で開催です。この20年間の自治の「航跡」を振り返るとともに、未来を見晴らして「自治の未来」を構想する場になることと期待しています。
 大いに自治を語り合い、「新・地方の時代」を神奈川から発信しましょう。

8月 21, 2006 自治・分権 | | コメント (135) |

2006年4月18日 (火)

新たなスタートの時

4月になりました。今年は、例年より早く開花した桜が長く楽しめました。
新入学、新社会人、転勤など、新たな人生のスタートを迎えた方も多いと思います。県庁にもフレッシュマン、フレッシュウーマンたちが目を輝かせて自治体職員の仲間に加わってくれています。毎年、新採用職員の一人一人に辞令を渡していますが、私もいつもすがすがしい気持ちになります。

さて、私は今年を「改革目標達成の年」と位置づけていますが、新しい年度に向けて、いくつかの新たな試みに着手しています。
そのひとつが「首都圏連合」の実現に向けた首都圏の連携・協力の強化です。「山・静・神サミット」のブログでも触れましたが、広域連携は現代の都道府県に共通の課題と言えます。これまでも首都圏の一都三県の知事同士で年に数回懇談会を開催してきたのですが、3月29日には、「首都圏連合協議会(平成17年開設)」の会議室において、知事だけでなく、各都県の商工会議所のトップの皆さんにも同じ席についていただき、首都圏全体をにらんだ幅広い協議を行いました。このように自治体と経済界のトップが広域で連携して懇談するというのは全国でも初めての試みだと思います。

この懇談会では、さらに行政プラス経済界に加えて、各界の代表の方にも加わっていただき、それぞれの立場から首都圏連携のあり方を議論いただく場として「首都圏連合フォーラム」の新設について協議を行いました。皆さんからは、大変前向きな意見が出され、一致協力して「首都圏連合フォーラム」をつくっていこうという合意がなされました。

私が首都圏連合を提唱してから、この間にずいぶんと社会情勢も変わってきました。
ひとつは、平成の大合併といわれるように、市町村合併が飛躍的に進んできたことです。市町村の数は、大合併が始まった7年前の3232から1821へと、約4割強も減少しました。合併にはさまざまな賛否両論がありますが、基本的には基礎自治体である市町村を強化することがねらいです。住民により身近な基礎自治体が強くなってくることは、住民と行政の距離が近くなり、より自治が促進されるという効果も期待されます。

もうひとつの変化は、前にも触れましたが、道州制の議論が一気に本格化してきたことです。これまでもさまざまな道州制「論」は議論されてきましたが、今年2月28日に、「地方制度調査会」から「道州制導入が適当」とする答申が出されたように、議論から「実現」に向けて動き出したことは大きな前進です。

私自身、130年以上前に設定された都道府県制度が社会経済の発展や人々の生活変化に伴って、見直しをすべき時期にきていることは、これまでも指摘してきたところです。基礎自治体の強化も、広域自治体である都道府県のあり方を問い直す好機であると思っています。もちろん、道州制は、地方分権型社会への「国のかたち」への転換を意味しています。あくまで道州制は地方自治強化という日本の構造改革の観点から進めていく必要があるのです。

首都圏連合は、こうした道州制の動向もにらみつつ、全国に先駆けて、新たな広域自治体のあり方を提案し、具体化していこうという構想であり、具体的なムーブメントだと思います。このためには、単に制度論に終始するのではなく、新たな広域自治体には何が求められるのか、広域連携によって具体的に「首都圏民」にはどのような恩恵がもたらされるのかといった地に足のついた議論を煮詰めていく必要があると思っています。
今後、首都圏連合フォーラムは、こうした実質的な検討の場にしていければと思っています。

「首都圏民」の皆さんからも、広く首都圏を見渡していただき、ご意見をお聞かせいただければと思います。


4月 18, 2006 自治・分権 | | コメント (37) |

2006年3月29日 (水)

「山・静・神サミット」

「山・静・神(さんせいしん)」、ちょっと何かの合言葉のようですが、実は、山梨、静岡、神奈川の頭文字です。1月25日、富士山がくっきりと映える富士吉田市で、山梨、静岡の知事と私の三人で集まって、「山・静・神サミット」の開催に向けて合意しました。

この三県は、地図を見れば分かるように、冨士、箱根、丹沢、伊豆などのエリアで、お互いに隣接しています。
そうしたエリアは、日本を代表する観光地や貴重な森林や湖などの自然資源のある地域でもあります。例えば、現在は静岡県である伊豆半島はかつては相模の国の一部でしたし、芦ノ湖は神奈川県にありますが水利権は静岡県側にあります。神奈川県最大の水道水源となっている相模川は、源流は山梨県の山中湖や湧き水で有名な忍野八海(おしのはっかい)です。交通網でも、東名高速道路は神奈川、山梨、静岡の三県を横断し、国内の物流の根幹となっています。神奈川県内では、これら県境のエリアは県西・県北地域にあたりますが、大変に大きなポテンシャルを持った地域として、今後、新たな発展に向けて力を入れてく重点地域であります。
一方で、東海地震や富士山の噴火などのおそれが指摘されるエリアにもなっています。こうした自然災害に対する備えにも三県の連携は欠かせないものです。これまでも、緊急医療のための医師などが同乗する「ドクターヘリ」の運用も三県で連携してきた実績もあります。

私は、「首都圏連合」の結成など首都圏の都県間の連携強化を訴えてきています。
これまでに、「八都県市首脳会議(首都圏サミット)」の開催を年2回に増やすことや、首都圏サミット共同の事務所の設置などを提案し実現にこぎつけています。今後は、これまでの行政だけのサミットだけではなく、経済人なども含めた「(仮称)首都圏フォーラム」の開催を提案しています。

首都圏連合や広域連携の強化は、既に一体化している経済圏、生活圏を前提にすれば、これに対応する広域行政の主体が必要だという考えに基づいています。例えば東京湾には5つも6つも港がつくられていて過当競争になっており、その上、アジアの中での国際港湾としての地位はどんどん低下います。もし相互の役割を分担して連携することができれば、アジアの他の国際港湾とも対抗することができるはずです。羽田と成田の空港も同じです。首都圏を支える国際空港として連携が必要なのです。環境問題では、ディーゼルの排ガス規制で首都圏の連携をしてきていますが、これも首都圏全体をカバーする行政体があれば、もっと速やかに対策を打つことができたでしょう。

国においても地方制度調査会が本格的に「道州制」の検討を行っています。先ごろも、日本を道州に区分するのに、「9分割」「11分割」「13分割」と三つの案を提示したところです。ただ、道州制は「区域ありき」ではなく、日本を中央集権的な「国のかたち」から、地方分権型の「国のかたち」に転換していくという大きな方向をしっかりと踏まえ、中央省庁と「道州」の役割のあり方などについて十分に検討する必要があると考えています。

ただ、「上から」(国が上というのではないですが)、線を引いて分割するというのには、必ずしも賛成できません。国がお膳立てをして、それに「乗る」のではなく、むしろ、地域同士、県同士がお互いの関連性を認め合って、連携関係を自発的につくっていくことが重要です。

つまり、道州制、地方分権は、あくまで地方主導で進行させるべきだというのが私の意見です。地方分権は、都道府県制度の改革ではありますが、国を単に「分割・再編」するだけではなく、より地方独自の柔軟な制度を想定していく必要もあるでしょう。さらには、新たな道州の間の「超広域連携」も求められるでしょう。例えば、将来、「首都圏州」と「東海州」が相互に連携して、地震対策にあたるという構想も出来るでしょう。このためには、何よりも地方が「主導権」を持って進めていくことが不可欠なのです。

「山・静・神サミット」の設置や「首都圏サミット」の強化、「首都圏連合」の提案は、こうした新たな「国のかたち」を実現していく、新たな「地方の挑戦」でもあると思っています。今年の秋には、第1回の「山・静・神」のサミットを神奈川県で開く予定です。ぜひ、この新たな挑戦にご注目いただければと思います。


3月 29, 2006 自治・分権 | | コメント (292) |

2005年7月20日 (水)

「闘う知事会」レポート

「全国知事会」という組織、ご存知でしょうか。
従来は、全国の知事の親睦・交流的な要素の強い団体でしたが、前岐阜県知事の梶原さんが会長に就任して以来、「闘う知事会」として、地方分権の実現に向けて、国にもの申す集団に変身しました。
同時に、会議でも議論が沸騰、熱い議論が戦わされるようになりました。

その会議が、先週の7月13・14日、徳島県で開かれ、私も行ってきました。全国の知事が一堂に会し、初日は午前中の11時から、昼食・夕食休憩をはさんで夜の10時まで。2日目は、朝8時半から11時まで議論の連続でした。
新聞各紙に掲載されていましたので、ご覧になった方も多いことと思いますが、要点をレポートします。

まず、議論の焦点は「三位一体改革」の推進のために、知事会としての「国庫補助負担金等に関する改革案」をとりまとめ、今後の作戦を練ること。

「三位一体改革」とは、①国から地方への税源移譲、それを前提とした②国庫補助負担金の削減、③地方交付税制度の見直し、この3つの改革を一体として進めるから「三位一体」と言っています。要は、国と地方との税財政制度のあり方を抜本的に改め、「真の地方分権の実現をめざす改革」です。

昨年、その第1ラウンドがありました。しかし、地方の改革案がほとんど反映されない、大変不満の残るものでした。その最大の原因は、地方自治体が改革の当事者であるにもかかわらず、最終決定権は国が握ったままであったからです。
つまり、土俵に上がっているのは霞ヶ関の官僚と族議員だけ。我々地方は、土俵にのぼれず、土俵の外で応援したり野次を飛ばすことしか出来なかったのです。

そこで私は、昨年来、「三位一体改革推進法」の制定を訴えてきました。
これは、三位一体改革の全体像を示す「推進計画」の作成を国に義務づけ、閣僚と地方代表との「協議の場」に法的根拠を与え、さらにチェック機能として民間人による第三者委員会を設置するというものです。
第1ラウンドの反省を踏まえ、改革の土俵や行司役をしっかりと法律で定め、地方も国と同じ土俵に上がって、闘える条件を整えようという提案です。

今回の知事会議でも、私はこの推進法の制定を全国の知事に訴えました。
その結果、知事会として国に強く要求していくことを、知事会の総意として合意を得ることができました。これは一つの前進です。しかし、ここからが勝負なのです。法律をつくるのは並大抵のことではなく、政治的な働き掛けなど、これからが正念場です。

次に、このブログで大いに議論になっている「青少年保護育成条例に基づくゲームソフトの有害指定」の問題です。私は、この知事会議の場で、全国の知事に向けて問題提起をしてきました。残虐的、暴力的なゲームソフトの青少年に及ぼす影響の大きさに鑑みて、2つの提案をしました。
①各都道府県において、当県が指定したゲームソフトを含め、残虐的・暴力的なゲームソフトの有害図書類の指定に向けた検討をしていただくこと。
②全国知事会として、ゲームソフト関係業界に向けて、より一層実効性のある自主規制の取組みについて要望を行うこと。
この二点を提起し、要請しました。

会長である麻生福岡県知事も「重要な問題である」との認識を示され、知事会として「社会文教常任委員会」という専門の委員会において、正式に検討することを決定いただきました。委員長である浅野宮城県知事もさっそく具体的な検討に入ることが表明されました。
今後、知事会としての検討に入るわけですが、全国の知事にも理解の輪が広がるものと期待しています。また、業界での実効性のある自主規制が定着することも期待したいと思います。

どうぞ、皆さんにも、「三位一体改革推進法」と「ゲームソフト」に関する推移を見守っていただきたいと思います。

7月 20, 2005 自治・分権 | | コメント (1916) |