宇宙からの帰還~箒杉(ほうきすぎ)の種~
11月25日、探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」での岩石試料採取に成功したといいます。小惑星での小さな試料ですが、この成功は技術的・科学的な「快挙」だと思います。
宇宙へのあこがれは人類共通のものではないでしょうか。
私も小学生の教科書で、ロシアのガガーリン少佐の「地球は青かった」(1961(昭和36)年4月12日有人宇宙飛行)と語ったエピソードを読んだことを憶えています。また、小学校5年生の夏休み(1969(昭和44)年7月20日)には、アポロ11号の月面着陸を、目を皿のようにしてテレビに見入っていました。「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」とのアームストロング船長の名言も心に残っています。
そうした「宇宙のヒーロー」が神奈川県から生まれました。宇宙飛行士の野口聡一さんです。今年7月から8月にかけてスペースシャトル「ディスカバリー」で、船外活動などを行って、無事に帰還されました。
少し前のことになりますが、10月2日、少年時代を過ごした「ふるさと茅ヶ崎市」で、コリンズ船長ら5人のクルーとともに、凱旋パレードに臨まれ、その後、市民文化会館で帰国報告を開かれ、私もお話をうかがいました。スペースシャトルから撮影された茅ヶ崎海岸のシンボル「烏帽子岩(えぼしいわ)」の写真には驚きました。
この会場で、野口さんから私に手渡していただいたのが、神奈川県山北町にある「箒杉(ほうきすぎ)の種」の「フライト証明書」です。箒杉は、神奈川県内で最高齢の生命体で、樹齢2000年という国指定天然記念物です。その種を、NASAに預けて、今回、野口さんのフライトに「同乗」させてもらったのです。「フライト証明書」はコリンズ船長、野口さんほか6名の宇宙飛行士の皆さんの「サイン」入りで、この種が間違いなく宇宙を飛び、帰還したものであることが証明されています。
2000年を超える「箒杉(ほうきすぎ)の種」が地球の自然の生き証人として、ハイテクの「スペースシャトル」で地球を外から見つめて帰還したというのは、どこかロマンのある壮大な「叙事詩」のようだと思いませんか。
そういえば、野口さんが宇宙飛行士になることを決心したのは、立花隆さんの書かれた『宇宙からの帰還』(中公文庫・刊)を高校3年生の時に読まれたのがきっかけといいます。宇宙飛行士の劇的な体験を描いたノンフィクションで、インタビューがあざやかな一冊です。
報告会の後で、昼食をはさんで、野口さんと二人で対談させていただきました。
「今回のミッション(フライト)は、コロンビアの事故の後で、打ち上げ延期も重なって、プレッシャーが無かったのですか?」と私がたずねると、野口さんは、「クルーが皆なごやかでNASA全体で取り組んでいたのでプレッシャーはなかった」と話されました。野口さんは、子どもの頃はボーイスカウトに加盟していて、「集団の中でチームワークを発揮すること学んだことは、宇宙飛行士になる上で役に立った」というお話も心に残りました。「船外活動では、すごくリアリティがあって、地球が青くて触りたくなるぐらいきれいだった。自分も星になったような感じがした」とのお話も印象的でした。さらに地球環境を守るための宇宙飛行士の役割や、私たちの使命についても話がおよびました。
野口さんによれば、近い将来、月旅行も夢ではないといいます。「将来を担う子どもたちには、夢を実現する気概を大切にしてほしい」とおっしゃる野口さん、改めて人間としての魅力を感じました。
今後、宇宙から帰還した箒杉の種から苗木を作り、野口さんゆかりの地などに植樹して、子どもたちが大きな「夢」を抱くシンボルにしていきたいと思っています。

