つい先ごろ、神奈川で農林水産業に携わっている皆さんから、現場でのご苦労や課題をうかがい、将来のビジョンについて意見交換する機会がありました。
神奈川県の農業就業人口は3万5千人、農地は県土の8.8%を占めています。全国的にみれば決して多くはないのですが、農地の生産性は全国でもトップクラスです。そして、野菜は314万人分、牛乳は211万人分の年間消費量に相当する生産量があります。身近に大消費地を持つという特徴を生かして、「都市農業」が盛んな地域なのです。神奈川の農業は、新鮮で安全・安心な食料を供給してくれることはもとよりですが、農地は水源涵養機能や洪水を防止する機能も果たしています。そして、「農」のある風景は、私たちに安らぎを与えてくれます。
また、水産業の就業人口は2千300人です。生産量は80万人分に相当します。三崎のマグロは全国的に有名ですし、松輪のサバや小田原のかまぼこも神奈川のブランドになっています。相模川などのアユも釣り客には人気です。最近では、つくり育てる栽培漁業などが盛んに行われるようになっています。
林業の就業人口は約300人で、担い手の高齢化も目立っていますが、神奈川の森林面積は県土の40%もあります。森林は、水源を守り、土砂の流出を防ぐといった自然のダムの役割も果たしています。私も移動知事室で、高校生のボランティアと一緒に下草刈りをしましたが、今後、さらに県民参加で森林を守り、同時に産業としての林業を再生していく必要があります。
さて、私は、農業には個人的にも思い入れがあります。というのは、私は川崎市多摩区の農家の次男坊なのです。私が小学校に上がるころまでは、まだまだ農地や山林も残っていて、父や祖父と一緒に肥えをかついで、畑にまいて農作物を育てていたという経験もあります。そのころ、家では牛を30頭ほど飼っていて、雪印さんに牛乳を卸していました。月に1回、祖父と代金をもらいに行き、その後、祖父におんぶされて、横浜に出てマリンタワーや山下公園で遊ばせてもらって、港を見たという思い出が今でも残っています。
私にとって、「農」はふるさとなのです。
ウイークリー知事現場訪問では、これまでに、横浜市都筑区でトマトの水耕栽培を行っている温室の訪問(平成17年11月21日)を皮切りに、かながわ農業アカデミー(平成18年2月7日)、寒川町のJAさがみファーマーズマーケット「わいわい市」(平成18年2月1日)、平塚市の神奈川県農業技術センター(平成18年8月31日)などを訪問してきました。また、移動知事室でも、さまざまな農業の現場を訪ね、意見交換をさせていただきました。最近では、平成18年11月13日に、全国有数の露地野菜産地である三浦市を訪れ、観光もぎ取り農園や露地野菜栽培の現場を訪問し、さらに農業に意欲的に取り組む神奈川県農業経営士協会、神奈川県国際農業研究会、神奈川県農協青壮年部協議会、神奈川県女性農業者連絡協議会の皆さんと懇談を行いました。
また、移動知事室などで、漁業や林業に携わる皆さんとも意見交換をさせていただいてきました。
農林水産業に携わる皆さんは、自然とともに働き、命を育むお仕事をされているからでしょうか、どの方も「哲学」を持って生きていらっしゃるように思います。しかも、本当にさまざまな工夫を積み重ね、さらに新たな「技術」にチャレンジしていることに頭が下がります。
これまでに神奈川県では、「かながわ」で作られたものを「かながわ」で食べる「かながわブランド」(現在62品目)の普及促進、たい肥等による土づくりと化学肥料・化学農薬の使用の低減をめざす「エコファーマー」の認定、「地産地消」(地場生産・地場消費)を合い言葉に、農業、消費者、食品産業、学校給食の各団体と県がネットワークを組む「かながわ地産地消ネットワーク」の形成などを進めてきています。
さらに、こうした取組みを総合的に推進し、都市農業のある健康で豊かな生活の確保をめざして、平成18年4月1日から「神奈川県都市農業推進条例」を施行しました。
安心・安全な「食」を確保することは、まさに、県民の健康と「命」を守ることにつながると思います。食は命の基本なのです。
最近では、遺伝子組み換え食品の安全性に関する懸念の声も聞かれます。こうした新たな課題にも取り組んでいかなければなりません。
その一方で、従来からある貴重な在来種の「遺伝子」保護も進める必要性も言われています。
県民の食と命を支える農業や漁業、緑と水を育む林業など、「ふるさと神奈川」の第一次産業の将来を、皆さんと一緒にしっかりと守り、育てていきたいと思っています。